3-『抱きしめて、離さない』

2009年09月28日
「甘い恋の5題」-3

『抱きしめて、離さない』



   ギン × 一護 。


   お題配布サイト・「追憶の苑」様より、お借りしました。
   タイトルの順番を入れ替えて、使用させていただいてます。








『唇が触れた。』  だた、それだけのことなのに。


一護にとっては、他人を好きになることさえ初めてで。
それ以上の事など、どう対処していいのか解らない。
考えれば考えるほど、恥ずかしさに居た堪れない気分になってしまう。

あれから、ギンも忙しいのか、人間界へは現れない。
自覚させられてしまった彼への想いを、今更なかったことにする気はないが、
どんな顔をして逢えばいいのか解らず、一護も尸魂界へは行ってなかった。

だが、そろそろタイムリミット。 死神代行の仕事を任されている以上、
さすがに報告へ行かなくてはならない時期となっていた。


その日に限って、尸魂界でも、ギンの姿が見えない。
それだけの事なのに、何故かとても不安になる。

いつまでも何の返事も返さない自分に、
あの男はもう飽きてしまったのではないだろうか、そんな気にさせられるから。
そう考えると焦ってしまう自分の想いを、自覚させられるから。

それとも、自分の知ることの出来ない任務において、怪我でも負ったのだろうか。
ギンの実力を考えればありえない、とは思うけれど、そんな心配さえ過ぎってしまう。

どちらにしろ頭に浮かぶのはギンのことばかり。
そんな女々しい自分に、一護はウンザリする。
まったくもって、そんな自分は、らしくない。

大きく一つ息を吐いて、一護は覚悟を決めるのだった。



向かった先は三番隊舎。 
そこには、いつもと変わらぬ薄笑いを浮かべたギンがいた。

「待っとったよ。」  
開口一番に掛けられた言葉で、彼の思い通り動かされたことを知る。

「久しぶりやんね、黒崎君。」
「・・・あぁ。」
「どうしたん?なんや顔が赤なっとるよ?」

にたりと笑みを深くする男には、きっと全てお見通しなのだろう。
一護が何を思ってここへ来たのかも、これから言いたい言葉も。
その考えが正しいかのように、そこに彼の副官であるイヅルの姿はなかった。

「・・・・・・」
それでも。 覚悟を決めて来たはずなのに、いざとなると言葉が出てこない。
ギンの方でも、取り立ててせかすこともせず、楽しそうに一護を見つめている。

「・・・あー、その。アンタの顔が見たかったから寄った。」
ぼそり。 最初に出たのはそんな言葉で。
いつかのギンの『言い訳』みたいだ・・・などとぼんやり思い出す。

「うん?いくらでも見てくれてかまわへんよ。」
にぃっ、笑みをさらに深くするギン。

追い詰められる。  彼からの手助けは、ない。
楽しげに、一護が自分から言葉にするのを、待っているだけだ。
多分、自らが言わなければ、二人の関係はどこまでも現状維持。
その中途半端な状況は、いい加減、落ち着かない。
一護は、改めて覚悟を決める。

「・・・アンタが、好きだ。」

眉間に皺を寄せながらの、ぶっきら棒な言葉。
表情だけ見ていたら、とても告白しているとは思えないだろう。
それでも、瞳を逸らすことなく放たれたその告白は、ギンが待ち望んだものだった。

なんとも一護らしい・・・そう思いながら、満足そうな笑みが浮かぶ。


「やっと、言うたね?・・・黒崎君。これでもう、キミはボクのもんや。」

手に入ったばかりの愛しい子を、腕の中に包み込む。
少し早めの心音が、ギンに伝わってくる。

「一生逃がさへんよ?覚悟しとき。」

心からの言葉。
負けず嫌いの一護は、ギンの望む答えを返してくる。

「望む所だ。そっちこそ、飽きるなよ。」

一護にしてみれば、『売り言葉に買い言葉』の心情なのかもしれないが、
ギンにとっては、嬉しい言質に他ならない。

「飽きるなんてありえへん。他人を<欲しい>思うたんは、初めてや。
もしボクんこと捨てようとしたら、射殺してまうよ?」

「ああ。その代り、俺を裏切ろうとしたら斬月で斬るからな。」
「黒崎君に斬られるなら本望や。けど、そん時はキミも道連れにしたるよ。」

「・・・なんでだよ。オレじゃオマエに敵わないって言うのかよ。」
「違う。死んでもキミを放さへん、っちゅーことやね。」

「・・・ばーか。」
恥ずかしさのあまり憎まれ口を返す一護に、ギンは笑みを深めると、ゆっくり唇を重ねる。
この間の掠めるようなものではなく。 深く、ゆっくりと味わうかのように。

繰り返される口付けの合間に囁かれる、ギンの言葉。
「一生、離さへん。・・・一護。」

(一生どころか、キミが死んだって離してやれへんよ・・・。)

続けられる言葉はギンの胸の中でだけ、囁かれた。


それは、誰に聞かせるでもない、ギン一人の真摯な誓い。





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