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『罪と罰』

2009年09月26日
浦原 → 一護 。


   シリアス風味。 浦原さんの独白。








罪を犯した。

自分の好奇心を満たすためだけに、それがどういう意味を持つかなど考えもしないで、
無意識のうちに、近付いてはいけない領域へまで踏み込んでしまっていた。

それは、決して変えようのない事実。
しかし、全ては終わった過去のこと。

浦原は、尸魂界を追放されることで、代償は支払ったと考えていた。
自分にとってさほどダメージのある罰とは感じられなかったが、
色々と興味深い研究が出来なくなって残念に思うこと以上に、
失って困るものなど、何一つ持ち合わせていなかったから・・・。
多分、自分に払える最大限の代償だったのだろう、と考えていた。


「黒崎サン・・・」

それなのに。

長い年月を経て、浦原は、この人間界で見つけてしまった。
それは、まだ自分のモノではなかったけれど。
すべてが鮮やかで、目が離せない存在。

気がついた時には、囚われていたのだと思う。
オレンジ色の髪と琥珀色の瞳、眩いほどの霊力を抱く子どもに。

一度懐に入れた他人に対して、どんな状況に陥ろうとも見捨てない甘さも。
鋭い瞳と眉間の皺のせいで、いらぬ苦労を背負い込んでしまう不器用な所も。
真っ直ぐに前を見据え、逸らすことなく瞳をあわせてくる素直さも。
自分にはない豊かな感情も・・・全てを好ましく感じる自分に驚いた。

そんな感情を、浦原は知らなかった。
他人になど興味を抱くこともなく、必要とも感じなかったのに。
一護だけには、傍にいて欲しいと願うのは何故なのだろう。
一護の一番近い存在になりたいと思う、その理由は・・・。


答えを出すより先に起こってしまった、『事件』。
終わったはずの過去は、まだ清算されてはおらず。
自分のしでかした『罪』の後始末に、一護を巻き込んでしまった。

浦原に出来ることは、ただ彼を鍛えることのみ。
全力を懸けたのだから、一護が生きて帰ってくる事を疑いもしなかったけれど、
全てを知ったら許されないかもしれないと、日々不安に苛まれていた。
一護に拒否されることが、何より恐ろしいと感じたから。


でも・・・こんな事になるとは思いもしなかった。

「・・・なんであの人なんスか?」

聞く人のいない言葉が、知らず口から零れ落ちる。
尸魂界でやる事を成し遂げたかの子どもは、
その後の僅かな時間で恋に落ちてきた。

相手は自分と同じ『死神』・・・その事実は思いのほか胸を刺した。


浦原もよく知るその男は人望も厚く、恋の相手として、問題などないだろう。
客観的に見れば、自分よりよほど真っ当な相手だと言える。
だが、頭ではそう理解しても、感情が納得することはない。

一護とは、自分の方が先に出会っていたのに・・・。
自分も尸魂界へ行くことが出来れば、こんな事にはさせなかったのに・・・。
愚にも付かない、そんな想いが、浦原の胸の中で渦巻く。

当たり前のように一護の隣に立ち、こちらへ送ってきた『彼』。
多分、自分に対する牽制の意味もあったのだろう。
彼の人が向ける眼差しは、剣呑なものだったから。
きっと、常に傍にいられないことが悔しいに違いない。
冷静に判断できるのは、そこまでだった。

この時になって、自分の感情の在処を知ったのだ。
今頃になって、やっと。

浦原の顔に、自嘲的な笑みが浮かぶ。


これが、『罰』。

やっと解った。
尸魂界を追放されたのは、罰でもなんでもなかった。
本当の『罰』を与えるための、ただの布石でしかなかったのだ。
どこの誰が用意したことだか知らないが、これは確かに耐えられそうにない。

一護が自分を選ばなくても、『人間』相手なら諦められたかもしれない。
大人な仮面をかぶって、傍で見守り続けることが出来たかもしれない。
どれほど心が痛くても、離れることは出来ないだろうから。
人間が相手なら、いつかは死が二人を別つだろうから。

でも、一護の選んだ相手は、よりにもよって死神。

死が二人を別つことは、ない。
一護の死をもって、二人は同じ世界で生きることが出来るようになる。
尸魂界に立ち入ることの出来ない、自分だけをこの世界に残して。

浦原の面に、皮肉気な笑みが浮かぶ。
「・・・まぁ、誰が用意したシナリオなのか知りませんケド。
このまま大人しくしているなんて、思わないほうがいいッスよ?」


これが『罰』なのだとしても、黙って受け入れることは出来ない。
そのために、再び罪を重ねる事になっても構わない。

今度は、意識的に、罪を犯す。

なくてはならない存在を、手に入れるために。
彼の人が、泣こうが喚こうが、躊躇いなんて抱かない。

「・・・黒崎サン。アタシみたいな人間を本気にさせたのが運の尽きッスね。
アナタは望まないでしょうけど、大丈夫。大事に大事に、扱ってあげますから。」

自覚があるのかないのか、端正な顔に浮かぶのは、歪んだ微笑。
昏い瞳でもって、空に浮かぶ月を睨みつける。
あたかも、それが、恋敵であるかのように・・・。

「あんな男に、大人しく、渡したりできませんしねぇ。
死んで尸魂界になんて・・・たどり着かせてやらないッスよ。」


・・・『罪』には、『罰』が。

一護の心があの男の上にある限り。
彼が自分から、浦原を求めてくれることはないだろう。
傍に捕らえても、憎まれ泣かれ、詰られるだけだろう。

それが解っていても、さほど遠くない未来、自分は再び罪を犯す。


浦原は、ふと思う。
もしかしたら、その自分の行動までもが、用意された『罰』なのではないだろうか。
自分のしでかそうとすることで、綺麗な琥珀色の瞳は、壊れてしまうかもしれない。
あの男への想いに、殉じてしまうかもしれない。

だとしたら、一護はとんだとばっちりだ。
浦原が犯した罪を購うためだけに、用意された『贄』。
可哀相に・・・と思う反面、甘い感情も浮かんでくる。

一護が自分の為に用意された『贄』だとするのならば、
それを手折るのに、何の躊躇いが必要だというのだろう。

浦原の心は、すでに決まっている。
自分は、『罪』を犯すだろう・・・

愛するものを、その手に入れるために。
例え、手折った花が、抜け殻のようになろうとも。



それが、自分の受ける『罰』。






                             ~ END ~

   何も求めない人の<唯一>。それを失くせないが故の、狂気。
   っていうのが好きなんですけどね・・・。 
   好きと書けるは、別の話だとしみじみ思いました(涙)。


     ( ’09.9.4 )






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