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1-『私の周りは暗闇ばかり』

2009年10月22日
「朝が遠すぎる5題」-1

『私の周りは暗闇ばかり』


   浦原 → 一護。


   姿が消えてしまった一護。 








一護の気配が消えた。
それだけで、浦原の心は闇に侵食されていく。

どれだけ離れていても、常に感じられていた霊圧が感じられない。
あの温かい気配の欠片さえ、見つけ出すことが出来ない。
彼の人の存在を知ってから、このようなことは初めてだった。



「夜一さん、どうすりゃいいんですかねぇ。」
人型に戻った唯一の親友に、らしくもない愚痴を呟いていた。

「落ち着け、喜助。」
「アタシは落ち着いてますよ?」
「・・・ともかく、ワシは一度、尸魂界へこの事を報告しに行って来る。」
浦原にも気取られることなく一護が姿を消したとなると、
藍染らが関わっているのは確かと思われた。

「よろしくお願いします。」
「いいか?ワシが戻るまで、くれぐれも早まった真似などするんじゃないぞ。解っているな?」
「やだなぁ~・・・アタシが何を仕出かすって言うんです?大丈夫っすよ。」

冥い瞳を隠すかのように帽子を目深くかぶり直すと、浦原は力なく笑ってみせる。
それでも何か言いた気な夜一だったが、しばらくすると諦めたように溜息をつき、姿を消した。





一人残された浦原は、一護と最後に会った時の事を思い出していた。


「最近、忙しいみたいっすねぇ?」
「あー。小物ばっかりなんだけどな。毎日のように虚が現れやがる。」

大して霊圧を消費しないで済んではいるが、毎日のように現れるとなると、
体力の方はそれなりに消費されていた。一護の顔色も心なしか冴えない。

「本家の死神は、どーしてるんすか。黒崎サンに丸投げとは何考えてんでしょーかね。」
「あっちもまだ後始末があって、こっちにまで手が回らねぇんだろ?
あいつらも人手不足で、色々と忙しいんだろうしな。」
「黒崎サンは甘いっすよ。もし、今ヤツラに狙われたらどうするんすか?」

一護は弱音などはかないだろうが、浦原にも彼の疲労が見て取れた。
彼の霊圧が人並み外れて強いから持っているものの、
一般的死神ならば倒れているかもしれないほどの激務である。
体の疲労だけで済んでいるのは、一護だからこそだと言えた。
彼の言うとおりいくら人手不足とはいえ、一護に任せきりな尸魂界に腹が立つ。
本来、彼は尸魂界に何の義理もない『人間』なのだ。
困っているのを放っておけない人柄を見越して、
一護に負担を強いているような尸魂界のやり方に、怒りを覚える。

「あぁ?考えすぎだろ、それ。いくら死神代行やってるとは言え、たかが人間だぜ?
わざわざこっちにまで来て相手するほどのモンだなんて、思ってねーんじゃないか?」

一護は呆れたような表情を浮かべ、一笑に付す。
しかし、浦原には嫌な予感がひしひしと伝わってくるのだ。

藍染と一護の邂逅する場面に居合わせることが出来なかったので、
彼らの間にどのような会話がなされたかは、想像するしかないけれど。
藍染の人となりならば、多少推測することが出来たから。

彼が自分の計画を邪魔した一護を、そのままにしておくとは考えづらい。
味方に引き入れようとするか消そうとするか、そこまでは解らなくても、
間違いなく興味を抱き、何らかの行動を仕掛けてくるだろうと考えられた。
彼ら3人があちらへ移行して、もうだいぶ経つ。
そろそろ事を仕掛けて来てもいいと思われる時期に、この激務だ。
何か裏があるような気がして、仕方がない。

だが、その事をどう言えば一護に解るよう伝えられるだろうか。

藍染の人となりを説明してみたところで、彼に理解させるのは難しい。
今のように、考えすぎだと一笑に付されて終わってしまうだろう。
結局、これまで以上に自分が気をつけようと、高を括ってしまっていた。
この決断を後悔する羽目になるとも、気付かずに。

「・・・でも。気をつけてくださいね。
黒崎サンに何かあったら、アタシは生きていけないんすから。」

それは紛れもない本心だったけれど。
冗談めかして、言葉にするのが精一杯だった。

「ばーか!何言ってんだ。」
「黒崎サンが冷たいっす~。アタシの愛を信じてくれないなんて。
こんなイイ男に告られて、何が不満だって言うんすか~~。」

「言ってろよ、この下駄帽子が!」
笑顔で返す一護に、本当の想いは伝わっていない。
けれど、浦原はまだそれでいいと思う。
彼が傍らに居てくれるならば。
ただ、それだけで良かったのだ。

自分の『本気』を伝えるには、まだ早い。
こうやって少しずつ、ふざける様に、距離をつめていけばいいと思う。
いつの日か、愛を語る自分の存在に違和感を感じなくなるまで。
どうあっても彼を失うわけにはいかなかったから、慎重に考えていた。
・・・そう思っていたのは、間違いだというのだろうか。

あの時、もっと、彼らの危険性についてくどく言えばよかったのか。
何かの防御になるような、発明品を用意して置けばよかったのか。
何より、あのまま一人で帰したりなんかしなければよかったのだ。


浦原の胸を、後悔の念だけが渦巻く。
嫌な予感を覚えていたのに。気をつけなければと思っていたのに。

事を起こすにしても。
『連れ去る』という選択肢を考えていなかった自分が、恨めしい。

あの日。
一護が大丈夫だと言い張っても、無理やりついていけばよかった。
一心に現状を説明し、何らかの口実を用いてでも、手元に置けばよかった。



いくら考えてみても、全てはもう遅い。

「黒崎サン・・・黒崎サン・・・一護サンっ・・・一護っ・・・っ・・・」

呪文のように、口から零れ落ちるのは、一人の名前のみ。
それが本体を連れて来てくれる、とでも言うかのように。

その音色だけが、今の浦原の心を、世界に繋ぎ留めていた。
彼の名前だけが、浦原に光を与えていた。


それ以外、浦原に残されたものは、ただ。
どこまでも深い暗闇ばかりである。





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『朝が遠すぎる5題』 | Comments(0)
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