4-『指先にキス』

2009年10月03日
「甘い恋の5題」-4

『指先にキス』



   ギン × 一護 。


   お題配布サイト・「追憶の苑」様より、お借りしました。
   タイトルの順番を入れ替えて、使用させていただいてます。








あの白くて繊細そうな手が、意外にも力強くて大きい事を知った。
その長い指は、腹立たしいくらい器用に動き、自分を翻弄してくる。

単純に、綺麗だと思う。 一護はあの手が好きだった。
どこまでも冷たそうな男の暖かい手は、心地よい。
手を繋がれるとドキッとしてしまうのは、一護だけの秘密だ。
ぼんやりとそんな事を考えていたら、急にギンの顔が目の前に現れた。

「な、なんだよ。」
考えていたことが考えていたことだけに、思わずうろたえてしまった。
その挙動不審さは、ギンの前では命取り。
何事かを察した男は、人の悪い笑みを浮かべる。

「なんや、イチゴちゃん。顔が赤いで?」
「・・・気のせいだろ。」
「そうやろか?熱でもあるんと違うん?」
わざとらしく、一護の額と自分のそれを重ねてみせる。
思い切り至近距離に顔が近付いて、一護はたまったものではない。
まだこの男の存在に慣れていないのだ。
『恋人』という言葉にさえ照れてしまう一護を知っているからこそ、
ギンがわざとこういう行動を取るのだと解っていても、どうにもならない。
ギンの思惑通り、一護の顔には、ますます熱が集まってしまう。

「やっぱり、熱いで?」
「や、これは違うから。」
「どう違うん?」
「・・・っ」
言葉に詰まる一護に瞳をあわせ、ニヤリと笑みを深くする。
「どうしたん、イチゴちゃん?教えてくれへんの?」
さらり、その大きな手で一護の髪をかきあげ、撫ぜる。
その手の動きの心地よさに一瞬気を取られた隙に、微かに唇に触れるものがあった。
「なっっ!」
「ん?ますます赤ぅなってるよ。熱、上がってしもうたんと違う?」
「・・・誰のせいだよっ。」
「ボクのせいやろか?そやったら、誠心誠意看病してあげんとねぇ。」
「いらねーよっ。」
「遠慮せんとき?ボク、イチゴちゃんだけには優しいから安心し。」
「・・・なんか違くねーか、それ・・・。」
呆れたように溜息を一つつくと、一護は話を切上げようとした。
だが、そんな思惑がギンに通用するわけもなく、性質の悪い男は耳元で囁いた。

「それにイチゴちゃん、ボクの手ぇ、好きやろ?」

「!!!」
最初から、気付かれていたのだ。
ギンの手に見惚れていた事に。
一護には、返す言葉もない。

咄嗟に否定することも出来ず、ただただ顔を赤く染めるのみで。
それを確認したギンは、楽しそうに、笑んでいる。

恥ずかしさに目元を微かに潤ませながら、赤く染まった様がとても愛しかったから。
見た目通り16年しか生きていない少年の初々しい反応が、可愛くて仕方なかった。
ギンだけがそのように一護の顔色を変えることが出来る・・・、与えられた特権。
それは一護が自分のものだと確認できるようで、ギンをいたく満足させてくれた。


「ボクとしては、手ぇだけでなく、ボク自身に見惚れて欲しいんやけどねぇ。」
「・・・んの、根性悪。」
「そんなボクんこと、イチゴちゃんは好きなんやろ?」
「・・・・・・。」
「答えてくれへんの?」
「・・・言わなくても、知ってるだろーが。」
「言葉で聞きたいもんなんよ。」

ギンも、一護が想いを言葉にすることを苦手としていることは、知っていた。
なんと言っても、『好きだ』と言われたことは、まだ最初の一回のみである。
ある条件下では何度となく言わせているが、ギンにしてみれば、自発的な言葉が聞きたい。

「言うてくれへんの?」
「・・・・・・。」
「イチゴちゃん、遊びやったんか?・・・ボク、淋しいわぁ。」
わざとらしく、面に哀しげな色を浮かべるギン。
作り物の表情だということは、一護にも解っていた。

解っていても放っておけないのが、一護である。
それを知った上でのギンの行動であることも理解しているから。
このキツネの思惑通りに動くのは、悔しくて。
思い立ったように、ギンの手を掴んで、引き寄せた。

その指先に、口づけを一つ。

ギンに指摘されたとおり、一護の大好きなモノ。
初めて自発的に唇を寄せるのには、適した場所かもしれない。
ついでに、ぺろり、一舐めしてやる。

勝気な瞳を上目で向ければ、呆気に取られたギンの顔があった。
その瞳までもが薄く開いており、一護の大好きな色が見えている。

「俺から触れたんだ。これなら解るだろ?」
珍しいギンの表情を見られた一護は、悪戯が成功して満足そうな笑顔。

我に返ったギンは、よからぬ表情を浮かべていた。
(可愛らしいことしてくれはったけど、ボクに悪戯しかけるなんて100年早いんよ。)

「そやね。確かにイチゴちゃんの気持ちは解ったわ。」
「おぅ。」
「そやから、今度はボクがイチゴちゃんに示す番やねぇ。」
「・・・や、充分伝わってるから!!」
「そない遠慮せんとき。」

ニタリと笑んだギンの顔を見て、一護は自分の行動の失敗を悟った。
こんな性質の悪そうな顔をしたときのギンには、どんな事をしたって勝てそうにない。

「そやね・・・、まずはボクも・・・」

その指先に、口づけを。




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